今年の4月にレコーディングをしたアルバム「命題」がようやく作品として形になった。リリース前日の今日、早いところではもう店頭に並んでいる。
今、僕がなにをしてるかというとまた九州にいる。九州から東京への帰路につくところだ。
「ふと」気付いたことだが、いつもこのブログを更新する時は、なにかの「帰り道」だった。
きっと帰り道はどこか寂しくて、楽しかった出来事を思い出しては、なにか記録に残したいという心情になるのだと思う。
「命題」
今回リリースされるアルバム「命題」を自分たちで何度も繰り返し聴いていて、どこかもの悲しさを感じることが多々あった。
それは作った際の心境や、ここ数年の状況が反映されているからなのだが、きっとこのアルバムは「帰り道」と相性がものすごく良いのだと気が付いた。
あなたが1人でも、家族でも、友達でも、恋人でも、誰かと、どこかへ行った「帰り道」に聴いてみて欲しい。相性の良さは約束できる。
それを踏まえて今回の「全曲解説」をしてみようと思う。先に言っとくけど、とても長いです。
そして、とても個人的なことまで書いてあるので、自分のイメージを優先したい人は読まないで下さい。
それでも・・って人はアルバム「命題」を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。
よし、いくか!
【#1】「終点」
オープニング・トラック。再生ボタンを押したらブレスから始まり、全員の音がいっぺんに出る。
『蜂のように刺す何度でも / 終点まで 道づれさ』というワードで始まります。
「蜂のように刺す」とはご存知、「モハメド・アリ」オマージュです。
作詞後に、訃報を知り、非常に驚き、悲しかったです。
話を戻すと、この曲は特に歌う事を意識して作りました。
まるで椎名林檎が歌ってもおかしくないようなメロディックで色気のある1曲が完成しました。
「終点」というタイトルが浮かんだ時からリード曲になりそうだなとなんとなく思っていました。
「終点」 MV
【#2】「夜明け前」
鍵盤を使用し、新たなDroogの道すじを照らすような1曲です。
ぶっちゃけると、もちろん「My Way」リスペクトです。
アルバムの最後の曲にしようかと思っていましたが、「終点(終わり)からはじまる」という今回のテーマにも沿って2曲目に持ってきました。
歌詞は現代の言葉とは思えないような古臭さを出すのに意識しました。歌詞においては80’sジャパニーズロックの影響が色濃く出ています。
【#3】「血まみれでも きみは美しい」
きっとこの曲ができた事によって「歌う」ということが自分の中で開けてきたのだと思います。今までにない、歌い方にチャレンジした1曲です。
タイトルの「血まみれ〜」とはデビルマンの名シーンより引用しました。漫画史上最大の感動シーンです。
腹に穴が開き頭の翼をもがれたシレーヌという悪魔は絶命寸前。そこに現れるのがカイムという悪魔で「シレーヌ、血まみれでも きみは美しい」と言うのです。そして死を意味する自分の身体を捧げる合体をする。このシーンを見てボロボロと涙が止まりませんでした・・・。
武骨ながらも愛するシレーヌのためなら死さえいとわないカイムの男気にグッときます。
【#4】「TOKYO SUBMARINE」
これぞDroog節な曲。ミュージックビデオも作りました。
東京をテーマとした曲はロックバンドには必須のように思います。
くるりの「東京」しかり、銀杏BOYZ「東京」・・・。挙げてもわかるように名曲が多いです。
自分の中で上京して5年、希望や夢に溢れている東京、ただ、たまに凄く怖くもなる東京、やっと東京についての曲が書けました。
これが今Droogが感じている「東京」です。
ミュージックビデオでは「東京=都会」のシティ感や、窮屈な潜水艦をテーマに映像をその場で映し出すという新たな手法にもチャレンジしています。youtubeにあるので是非とも見てほしいです。
「TOKYO SUBMARINE」 MV
【#5】「Loser」
今までは出せなかったメロディを出した1曲です。
今まではいいメロディがあってもどこか恥ずかしいような、照れくさいような気持ちがあり、ストレートに歌うことができませんでしたが、今回は一切のブレーキをかけずにいいと思ったものを全て出し切りました。
レコーディングではボーカルに独特のエフェクトをかけて録音しており、その点もこだわったポイントのひとつです。
【#6】「B級ブギー」
この曲もDroogが得意とするタイプです。
色でいったら「青」。
B級ブギーなどと言っておきながら、非常に王道なブギーリズムでスタジオでセッションしながら作っていきました。
歌詞も、言葉をなるべく詰めて、言葉数を多くして、できるだけ冷静に、そして冷たく意識して歌いました。
きっとその方がこの曲の良さが出るだろうなと思っていたからです。
ざわついた日常の中で、ふとしらけてしまう瞬間ってありませんか?そんな一瞬に対して、「そうじゃないだろ、もっと熱くなれよ」と思う自分と、冷めてしまった自分が葛藤してる空気感が出せればいいなと思って作りました。
【#7】「オールド・ロマンス」
この曲も今までのDroogにはないタイプのミドルテンポのメロディ、ノリ重視な曲です。
作っている際に意識していたのは曲でいうと「Heat Wave」、バンドでいうと「THE ROOSTERS」です。九州の血が流れている1曲だと思います。
自分の声が元々嫌いで、だからわざとガラガラ声で歌ってみたり、叫んで声質を変えるということをしてきましたが、自分の持っている声と、向き合うことによって、キチンと自分の声の弱点、好きな点も理解することができてきました。
その上で何物でもなく、自分自身の声、というものを意識して歌いました。もし自分が映画を撮るとしたらエンドロールで流したいくらいのエンド感満載な雰囲気に仕上がったと思います。弾き語りで歌ってもとても気持ちのいい曲です。
【#8】「晩夏のブルース」
今回のアルバム全曲に言えることですが、ここ数年のTHE YELLOW MONKEYとの出会いが大きかったです。完全に後追いですが、今では大ファンです(笑)
「晩夏(ばんか)」とは夏の終わりを示す言葉で、実はこの曲を作っていた時にデヴィット・ボウイの訃報を受けました。そこで「晩夏 & 挽歌=死者への歌」というダブルミーニングにしました。
【#9】「こわれても」
Droog初のスローテンポなバラードです。
ずっとバラードを作ればと色々な人から言われていて、それでも今までのDroogでは消化することができませんでした。でも、このタイミングで出来たのはきっとバンドがバラードを歌う覚悟が出来たからだと思います。
なるべく静かに、「静」を意識しながらも、感情的に歌おうと決めていました。
Droogにとっての初バラード、まさに「帰り道に聴いて欲しい」曲です。
イメージとして、このアルバムはここ9曲目で一旦区切りがつきます。
そして、最後の「命題」という曲で、「これから」を歌います。
【#10】「命題」
アルバムタイトルにもなっているこの曲で「生」と「死」、「出会い」と「別れ」、それでも自分らがどうやって生きていくのかを歌いました。決意表明のような意味合いです。
実はこの曲のタイトルだけ最後まで決まらず、レコーディングが終わって「命題」と名付けました。
「命題」 MV
仮タイトルは「ロックバンド」だった。
何故この時代にロックバンドを選択して、やっているのか。そしてそれを受け止めてくれる人がいる。きっとそれら全てに意味があると思うのです。
大袈裟だけど、僕らにとっての命題が「バンド」であり「ライブ」であり「ロック」なのです。
人生の中で何かひとつだけでも命を掛けてやってみたい、そんな思いでこの作品を作っていきました。と言っても、それはあくまでこちら側の話、作り手の個人的な話であって、リリースされたらもうあなた達のものです。
どう聴いてもらっても、どう受け止めてもらっても構いません。
長々と全曲解説をするにあたって、ここまで作り手の個人的な意図や思いを説明するのはどうかと悩みました。リスナー側からすると、そんなこと知ったこっちゃあないし、知らない方が良い場合だってあります。
ただひとりでも多くの人に聴いて欲しい、興味のない人に少しでも興味を持ってもらえれば幸いとと思い、僕の拙い文ですが今回のアルバムについて長々と書きました。
でも、もしこの作品を気に入ってもらえて、ライブハウスに来てもらえれば、これ以上の幸せはないです。
長文にお付き合いいただきどうもありがとうございました。
「命題」
1人でも多くの人に届くことを願って。
2016年8月2日(蝉時雨に降られる午後に)
カタヤマヒロキ